腎臓病はシニア犬・猫に多くみられます。猫では死因のトップです。腎臓はその機能の一部が失われても症状が現れにくく早期発見が肝要です。シニア犬・猫が腎臓病になったらサプリメントを早めに利用することもあります

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更新日 2021/01/30

犬・猫の腎臓病の早期発見とサプリメント

腎臓病になると

腎臓病について知ろう!

腎臓病はシニア犬・猫に多くみられ、犬ではがん・心臓病に次いで3番目、猫では死因のトップになっています。特に猫では、15歳以上の猫の約30%が発症しているというデータもあります。腎臓は、その機能の一部が失われても症状が現れにくく、気づいた時には手遅れの状態になってしまっているケースが多くみられます。愛犬・愛猫の快適なシニアライフのため、腎臓病について知っておきましょう。

腎臓には5つの大切な働きがあります

1. 血液をろ過して尿をつくり、体内で不要になった物質や水分を排泄する
2. 血液中のイオンバランスを調整し、体液の恒常性を維持する
3. 血圧を高める酵素を産生したり、塩分と水分の量を増減したりして、血圧を調整する
4. 赤血球をつくるホルモンを分泌する
5. ビタミンDを活性化して、カルシウムの吸収を高めて骨や歯を強くする

慢性腎臓病の原因

慢性腎臓病とは、数か月から数年かけてゆっくりと腎臓の破壊が進行し、全体の機能の3/4が失われた状態を指します。腎炎や感染症、高血圧、腫瘍、先天性の奇形など原因はさまざまですが、多くの場合は特定ができません。猫の腎臓病は、犬の2〜3倍多く発症します。腎臓に存在するネフロンの数が、猫はもともと他の動物より少なく、犬の半分しかないことや、尿石症の発症率が高いことなどが一因と考えられています。

腎臓病の進行

腎臓はいったん壊れてしまうと、機能が元に戻ることはありません。症状に気づいた時には半分以上の機能が失われていることもあるため、残りの正常な部分が代わりに数倍の働きをしなくてはならず、このことで様々な症状が現れます。機能はどんどん失われ、限界を超えると急速に症状が悪化することもあります。

腎臓の作りの違いから、猫は早い段階から症状が現れることが多いです。このため、早めの治療で症状が改善することが期待できます。一方、犬では、体の中に毒素が蓄積して初めて症状が現れることが多いため、気づいた時には病気がかなり進行し、尿毒症になっていることもあります。

こんな症状がみられたら要注意

・飲水量と尿量の増加
・食欲の低下
・体重の減少
・嘔吐
・脱水による毛艶の悪さ
・貧血

慢性腎臓病は進行性の治らない病気です。しかし、腎臓は機能の1/2が失われるまで全くの無症状のことが多いです。早期発見のために少なくとも成犬・成猫では年1回、シニアになったら半年に1回の血液検査と尿検査を心がけましょう。軽度の機能低下の段階で発見できれば、食事の改善やお薬などで病気の進行を緩やかにし、長く健やかに過ごすことができます。

おうちでできる腎臓ケア

飲水量を増やす

慢性腎臓病になると尿の濃縮力が低下していきます。今までと同じ量の老廃物を排泄するためには、薄い尿をたくさん出すことで対応しなくてはなりません。猫はもともと乾燥した環境に適応するため、犬に比べてあまり水を飲まない習性があります。加齢によって喉の渇きに鈍感になることで、飲水量はさらに減少してしまいます。

その結果、高齢猫は犬よりも腎臓病になりやすく、腎濃縮力が落ちることで脱水しやすくなります。そのため、新鮮な水をいつでも自由に飲めるように、水飲み場を数か所に用意してあげましょう。ドライフードをウエットフードに変えたり、スープをかけてあげたりするのも水分摂取量を増やすのに効果的です。どうしても水を飲めないときには、点滴が必要になることがあります。

食事療法

慢性腎臓病は食事療法によって病気の進行を抑え、尿毒症の症状を予防・低減することができます。腎臓病用に成分を調整した療法食もありますので、愛犬・愛猫の状態に合った療法食を使うとよいでしょう。療法食は一般に次のような栄養素に注目して、調整されています。

リンの制限

腎臓はビタミンDを活性化して、腸管から食物中のカルシウムの取り込みを促します。腎機能が低下すると、ビタミンDを活性化できなくなり、血中カルシウム濃度が低下します。その結果、体は骨を溶かしてカルシウムを入手しようとします。溶け出したカルシウムは血中のリンと結びついて、全身のあちこちの組織に石灰の塊をつくり障害を起こします。そのため、食事からのリンの摂取量を制限する必要があります。

良質なタンパク質の摂取

尿毒素の多くはタンパク質の代謝物であるため、腎臓病には低タンパク食を給与すべきといわれてきました。しかし、最近は腎臓病の進行を遅らせるためには、タンパク質の制限よりも、食事中のリン含有量を減らす方が有効だといわれています。タンパク質を減らしすぎてしまうと、エネルギー不足になり、筋肉などの自身のタンパク質を消耗してしまいます。これもまた尿毒症を悪化させます。そのため、慢性腎臓病の犬・猫には、良質なアミノ酸バランスを持つタンパク質源を選ぶ必要があります。

ナトリウム(食塩)の適度な制限

健康な犬・猫では、過剰な塩分は尿に排泄し、不足した場合には再吸収をして体内のナトリウム濃度を調整するため、食事中の塩分量はほとんど問題にはなりません。しかし、慢性腎臓病になると、ナトリウム排泄量の調整が困難になります。ナトリウムを過剰に摂取すると、体に水分がたまり、高血圧や浮腫などが発生します。また不足すると、脱水を起こしてしまいます。適度なバランスが必要となります。

カリウムの調整

慢性腎臓病では、食欲不振や嘔吐によりカリウム摂取量が低下したり、多尿でカリウムの喪失が増加したりすることで、低カリウム血症が起こることがあります。一方で、カリウムの排泄が困難になることで高カリウム血症が起こることもあります。カリウム不足の場合には、筋肉や腎臓にダメージを与えたり、栄養素の代謝異常を起こしたりすることがあるため、経口カリウム剤を補給することもあります。

サプリメントを選ぶ時の成分チェック

腎臓病の状態によって必要な栄養素は異なります。療法食を食べていれば十分なものもあるので、獣医師と相談してください。療法食だけでは足りない成分や、療法食を食べない場合にはサプリメントを使うことを考えてみましょう。

活性炭

腎臓でろ過しきれなかった老廃物を腸内で吸着し、便に排泄することで腎機能を助けます。

リン吸着薬

一般には炭酸カルシウムが使われます。食物由来のリンと胃の中で結合して便に排泄することで腎機能を助けます。

乳酸菌などの善玉菌製剤

慢性腎不全と腸内細菌の関係が注目されています。腸内細菌のバランスが崩れ、悪玉菌が優勢になると多くの尿毒素がつくられます。この尿毒素が原因で腎機能はさらに悪化します。そこで、乳酸菌などの善玉菌を増やすことで腎臓病の進行が抑えられると考えられています。

オメガ3脂肪酸

血管拡張作用により血圧を下げて腎臓の負担を減らす働きと、腎臓の炎症を緩和する働きが注目されています。また、ビタミンEやCといった他の抗酸化剤と一緒に与えることで腎保護効果がさらに高まったという報告もあります。

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