ミルクは準完全栄養食品
ミルクは、優れた栄養バランスをもつ「準完全栄養食品」といわれています。タンパク質・脂質・炭水化物の3大栄養素に加え、カルシウムなどのミネラルやビタミンAおよびB群も豊富に含んでいます。
アミノ酸スコアは100。動物が体内で作ることができない必須アミノ酸を含む20種類のアミノ酸がバランスよく含まれています。
優秀なカルシウム源になります。豊富なカルシウムを含み、それがミルクタンパクと結びつくことで、非常に吸収されやすくなっています。
低GI(血糖指数)食品でもあります。牛乳に含まれる炭水化物の「乳糖」は、腸内細菌によってゆっくりと消化されるため、急激な血糖値の上昇を起こしません。また、オリゴ糖の一種である乳糖は、腸内善玉菌のエサとなり悪玉菌の増殖を抑えてくれます。
健康長寿につながる牛乳の有用成分
人において牛乳の摂取が健康長寿と関わりがあるという報告は数多くあります。犬や猫においての調査でも牛乳と長寿との関連性が示唆されたことがあります。この調査では、長寿との関連性が高い項目の中に、
・毎日の運動
・同居ペットの存在
・手作りフードの給与
などと並んで、「週に何度か牛乳を与えている」ことが挙げられていました。
出典元:
「犬と猫における長寿に関わる要因の疫学的解析」城戸佐登子 他
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jve1997/5/2/5_2_77/_article/-char/ja/
ではミルクに含まれている主成分は健康長寿のために、どんな働きをしてくれるのでしょうか?
カルシウム
牛乳のカルシウム吸収率は約40%と他の食品よりも高く、骨の形成に欠かせないビタミンDも含まれているため、効率よく骨の成長を促すことができます。高齢になると低下してくる骨密度を維持するためにもミルクの摂取を積極的に行い、併せて運動を行うことが人では奨励されています。
ラクトフェリン
母乳などの体液に存在する感染防御機能をもったタンパク質で、抗菌・抗ウイルス作用があります。絶妙なバランスで悪玉菌を抑制し、ビフィズス菌のような善玉菌を増やしてくれます。
鉄を運搬して貧血を改善したり、抗炎症作用や脂質代謝の改善など、健康維持に関わる様々な働きが知られています。熱に弱いため、熱処理された市販の牛乳や乳製品にはほとんど含まれていません。
BCAA
牛乳から乳脂肪とミルクプロテインを除いた液体は、ホエー(乳清)と呼ばれます。ホエーには、筋肉づくりに欠かせない「BCAA」が豊富に含まれています。BCAAは分岐鎖アミノ酸の略で、バリン・ロイシン・イソロイシンの3種類です。BCAAは筋肉の合成を促進するため、運動を組み合わせることで高齢動物の筋肉量維持が期待されます。
WYジペプチド
最近の研究では、牛乳やチーズに含まれる「WYジペプチド」と呼ばれるアミノ酸には、脳内の炎症を抑えて認知症を予防する効果があることが認められています。
短鎖脂肪酸
牛乳・乳製品以外にはほとんど含まれない成分で、腸内環境を弱酸性にすることで悪玉菌の増殖を防ぎ、腸内の炎症を抑える作用があるとされています。また、認知機能の低下を抑える働きにも注目されています。
ミルクの注意点
以上のように優れた食品であるにもかかわらず、牛乳を犬や猫に与えない方がいいという意見をよく聞きます。なぜなのでしょうか? 牛乳のデメリットは下痢をすることと、太ることです。
乳糖不耐症
成長した犬や猫は、乳糖を分解するラクターゼという消化酵素が少ないため、乳糖の消化がスムーズに行えずお腹がゴロゴロしたり、下痢をすることがあります。日本人は約85%が乳糖不耐症といわれていますが、犬や猫はそれ以上だといわれています。ペット用ミルクには乳糖を除いたものや、乳糖分解酵素が含まれたものがあり、消化不良を起こしにくくなっています。
牛乳アレルギー
牛乳中のタンパク質にアレルギー反応を起こすことがあります。乳糖不耐症より症状が強く、少量でも下痢をしてしまいます。皮膚症状を起こすことも多く、湿疹や脱毛がみられることがあります。牛乳中のアレルゲンは乳酸菌発酵によって低減するので、アレルギーがある場合にはヨーグルトを選ぶ方がいいでしょう。
栄養過多
牛乳は本来子牛を育てるためのもので、栄養豊富で十分なカロリーをもつ食品です。そのため摂りすぎると肥満になることがあります。対策としては、牛乳をあげる時はおやつやフードを減らす、低脂肪乳を選ぶなどがあります。
ペット用ミルクの活用
ミルクは健康なペットには必ずしも必要なものではありませんが、成長期の子犬・子猫や、食欲が落ちて体力を消耗したペットの栄養補給や水分補給のため、シニアペットの免疫強化や体力維持のために大いに役立ちます。犬や猫のコンディションに合わせて、カロリーやタンパク量などを考え、調整しながら与えてあげましょう。
シニア犬・猫には、消化がよくて内臓への負担が少ないミルクがおすすめです。犬猫用ミルクには、乳糖をカットしたり乳糖分解酵素を配合したりしている牛乳や、食品原材料を用いた人工乳などがあります。
ヤギミルクは犬や猫の母乳に成分が近く、下痢やアレルギーを起こしにくいといわれています。さらにカルシウム、ビタミン、タウリンなどの栄養素が牛乳よりも豊富なため、シニア犬猫や体力の落ちたペットの栄養補助食品として適していると言えるでしょう。
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