5大栄養素のうち、タンパク質・脂肪・炭水化物はエネルギー源となります。そしてビタミンとミネラルは体の調子を整える役割を担っています。シニア犬・猫の健康な体作りのためには、ビタミン・ミネラルすべてがバランスよく含まれる食事が必要です

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更新日 2020/07/02

シニア犬・猫の命をつなぐビタミン・ミネラル

ビタミンとミネラル

5大栄養素のうち、タンパク質・脂肪・炭水化物はエネルギー源となります。そして、ビタミンとミネラルは体の調子を整える役割を担っています。犬と猫の健康な体作りのためには、すべてがバランスよく含まれる食事が必要です。

ビタミンの働きと種類

ビタミンは微量で生体の機能や代謝を円滑にする働きをもつ有機化合物です。体内で十分な量を合成できないため、食物より摂取する必要があります。また、ビタミンには動物の種類によって必要量が著しく異なるという特徴があります。

脂溶性ビタミン

ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK。脂肪に溶けて体内に吸収されます。肝臓や他の脂肪組織に蓄積されやすいので、過剰摂取には注意が必要です。

水溶性ビタミン

ビタミンB群(B1:チアミン、B2:リボフラビン、B6: ピリドキシン、B12: コバラミン、パントテン酸、ナイアシン、葉酸、ビオチン)、ビタミンC(アスコルビン酸)。水に溶けて体内に吸収されます。尿中への排泄が容易なため、過剰症は起こりにくいですが、供給し続けないと欠乏症になることがあります。

ビタミン 生理作用
ビタミンA 視覚の維持、皮膚・被毛の健康維持、免疫強化、抗酸化作用
ビタミンD カルシウムとリンの吸収・利用の調節
ビタミンE 抗酸化作用
ビタミンK 血液凝固
ビタミンB群 代謝の調整、正常な発育
ビタミンC コラーゲンの生成と保持、脂質代謝、抗酸化作用

ビタミンの欠乏症と過剰症

総合栄養食といわれるペットフードには必要量のビタミンが入っているので、今ではビタミン欠乏症はほとんどありません。しかし、過剰症には注意が必要です。水溶性ビタミンは、過剰な場合に体外へ排泄されますが、脂溶性ビタミンは体内に蓄積されます。脂溶性ビタミンが体内で過剰になると、中毒や副作用を引き起こすことがあります。

欠乏症 過剰症
ビタミンA 眼病、夜盲症、抵抗力低下、皮膚トラブル 食欲不振、体重減少、骨の弱り、関節炎
ビタミンD クル病、骨軟骨症 食欲不振、嘔吐・下痢、疲労、石灰化、腎障害
ビタミンE 繁殖障害、免疫低下、黄色脂肪症(猫)
ビタミンB群 発育不振、皮膚炎、神経障害、貧血、脂肪肝、口内炎(ナイアシン欠乏)

犬では、植物由来のβ‐カロチンもビタミンAと同様に利用できます。しかし、肉食動物の猫はカロチンを利用することができないため、ビタミンAを直接摂取する必要があります。魚介類にはビタミンB1を破壊する酵素が含まれるため、生で食べると神経症状を引き起こすことがあります。猫の方がビタミンB1の要求量が高いため、より症状が現れやすくなります。

犬や猫は、ビタミンCは体内で合成することができ、ビタミンKは腸内細菌がほぼ十分量を合成しているため、食事での給与は不要だといわれてきました。しかし、シニア期になるとビタミンの合成と貯蔵を担う肝臓の働きが弱ってくるため、十分な量のビタミンが作られていないのではないかと考えられています。

慢性肝炎のように肝臓自体に障害がある場合はもちろん、病気治療のために飲んだ薬を代謝するために肝臓が働いている場合にも、ビタミン不足になる可能性があります。とくにビタミンCは、ストレスの多い生活や加齢によっても合成できる量が減少するといわれています。

ミネラルの働きと種類

必要量は微量ですが、体の構成成分になったり、体の調子を整えたりするのに重要な役割をしています。ミネラルには次のような機能があります。

・骨や歯を作り、タンパク質やリン脂質の構成成分になる
・イオンとなり、体液バランスの調節、筋収縮、神経伝達を行う
・酵素活性やホルモンの構成成分として代謝に関わる

ミネラルは、その存在量によって2つに分けられます。

主要ミネラル

カルシウム(Ca)、リン(P)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、硫黄(S)、塩素(Cl)、マグネシウム(Mg)。体重(kg)当たりグラム単位で含まれる元素です。骨や歯の構成成分(Ca、P、Mg)になったり、体液中にイオンとして存在(Na、K、Cl)したり、タンパク質中に存在(S)するため、量が多くなります。

微量ミネラル

鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、セレン(Se)、モリブデン(Mo)、ヨウ素(I)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)など。体重(kg)当たりミリグラム〜ナノグラム単位で含まれる元素です。一般に、特殊な酵素の成分となるため量は少ないです。ただし、Feは血液に、Znは被毛に含まれるため、やや多く存在します。

ミネラルの欠乏症と過剰症

ミネラル 機能 欠乏症 過剰症
Ca 骨・歯の成分、神経・筋機能の制御、血液凝固 クル病、骨軟骨症,骨粗鬆症、骨形成不全 骨形成不全、尿石症
P 骨・歯の成分、核酸・ATPなどリン化合物の成分 同上 骨吸収
K 体液調節、血液・細胞成分、神経・筋機能 筋力の低下、麻痺 心停止、十二指腸潰瘍
Na 同上 高血圧
Cl 同上、胃酸の成分
Mg 骨・歯の成分、糖代謝 興奮、痙攣、骨形成不全 尿石症
Fe ヘムタンパク質の成分、酸素運搬 栄養性貧血 多血症
Cu 酸化還元酵素・SODの成分、鉄代謝に関与 貧血、成長不良、脱毛
Zn 多種の酵素反応、インスリンの成分、繁殖に関与 不妊、成長阻害、皮膚炎、皮膚の角化異常、毛色素欠乏症
I 甲状腺ホルモンの合成 甲状腺機能低下症、低成長 甲状腺機能亢進症
Se 抗酸化酵素の成分 成長阻害、筋ジストロフィー 脱毛、皮膚炎

主要ミネラルで特に重要なのはカルシウムとリンです。いずれも骨・歯の構成成分なので、不足または過剰で骨・歯に関わる病気が誘発されます。十分量を満たすことに加えバランスも大切です。リン(P):カルシウム(Ca)=1:1〜1.3の比率で摂取することが理想とされています。

肉類は、ミネラルバランスの点では、非常に問題のある食品です。例えば、牛ひれ肉や鳥のささ身ではP:Ca=60:1、マグロではP:Ca=54:1となり、圧倒的にカルシウム不足となるので、肉だけに偏った食事には注意が必要です。

シニア犬・猫のために意識したいビタミン・ミネラル

犬や猫にもライフステージに応じて配慮すべき栄養素があります。現在の食事で不足する栄養素があれば、サプリメントで補給する方法もあります。ただし、過剰摂取には十分注意が必要です。

マルチビタミン・ミネラル

食が細い、食べむらがある、手作り食をあげている場合などにはビタミン、ミネラルがバランス良く含まれた総合型サプリメントが安心です。

抗酸化系やビタミンE

抗酸化作用があり、高齢化に伴う酸化ストレスから体を守ります。また、免疫力を高めてくれます。

亜鉛の強化

被毛のつやと皮膚の弾力の維持をサポートします。また、肝臓や腎臓の繊維化を抑制して、これらの臓器を保護する働きが知られています。免疫タンパクの構成成分でもあり、免疫強化にも役立っています。

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